これから開業して院長になったとしても、院長という仕事柄、いつ何時、リタイアしなければならない事態になるかはわかりません。
それは、院長は体力的にも精神的にもきつい仕事だからです。ここでは、承継リタイアを利用して院長を辞めた後、獣医師としての新たな働き方を始めた、2人の先生のケースを紹介します。
動物病院の院長を辞めた後は何をする?
☆院長としてのゴールは自分で決めました。新しい働き方の「ゴール」も自分で決めます
動物病院を第3者に譲る理由
私が自分の動物病院を他者に譲ろうと思った原因は、2つあります。
1つは、今の獣医療技術の進歩に自分がついていけないと感じたことです。
もう1つは、勤務医とか、看護師を継続的に雇って行くことが厳しくなってきたからです。
私は神奈川県綱島で開業したのですが、募集をかけても全く来ませんでした。
1年前にフルタイムの勤務医が辞めました。
経理は母に手伝ってもらっていたのですが、その母が亡くなった後に勤務医が辞めたので、経理も全部私がやらなければならなくなって大ピンチになりました。
この状態で4月からの繁忙期を迎えることを想像した時、病院を譲って早期引退をしようと思いました。
結果として53歳でリタイアすることになりました。
精神的なプレッシャー
肉体的プレッシャーに耐えられそうもないと思い、リタイアを決意したのですが、院長をリタイアした後になって気付くのは、精神的なプレッシャーの方が大きかったということです。
身体は休んでいる時でも、精神的に休まる時は一度もなかったことが院長を辞めてから気付きました。
「そんなに簡単に辞めて未練はないのか」と聞かれることもありますが、私はむしろ、「やりきった」という充実感があります。
院長リタイア後の生活はどうしているのか?
週に3日間は、勤務獣医師として友達の動物病院に勤めています。今は、自分が診たいことだけやればいい形で勤めさせてもらっているので、
院長時代とは、肉体的、精神的にまるで違いますね。
また、院長時代から一番やりたかったのが、マラソンです。走るのは、学生時代に長距離走をやっていたのですが、
46歳の時、再びやりたいと思いました。このまま院長としての仕事を続けていくよりも、走る方が人生を楽しめるのではないかと思ったことも、早期引退の要因となりました。
マラソンがいいのは、「ゴール」が必ずあることです。
42.195キロと長いですが、ゴールすればそこで終わり。達成感もあります。
このマラソンに比べて、院長生活は「ゴールが見えない生活を続けている」と感じていました。
今回、承継リタイアで院長としてのゴールを自分で決めました。その後は自分がやりがいと働きがいを感じられるように働き方を変えましたが、この新しい働き方を何歳まで続けるのか、その「ゴール」は身体と相談しながら、これから設定してもいいのかなと思っています。
渡辺忠 元院長(M動物病院勤務)
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