臨床向きの人間性とは
臨床に向いているかどうか、臨床家として将来飼い主さんの評価を得られるかどうかについては
さまざまな意見があると思いますが、学生さんから聞かれることも多いので私の意見を述べさせていただきたいと思います。
まず第一は、見ず知らずの人と会うのが好きということ。
研究者と臨床家の大きな違いは、見ず知らずの人との出会いの場の多さだと思います。
臨床家は自分が会いたい人だけではなくそうでない人とも会わなければなりません。素晴らしい人との出会いの喜びを知っているとそうでない人との出会いも許容できると思います。
私も、本当に多くの獣医師の方と出会わせていただきました。おそらく、コンサルティングと
個別相談でお会いした臨床獣医師の方だけでも1000人以上にお会いしました。
素晴らしい人との出会いは大きな喜びですし、トラブルになるような出会いからも素晴らしい教訓を
得ることができると思います。
第二は人の心を理解する感性を持っていること。
空気を読む、という言葉が流行っていますが、この言葉の真意は、人の心が読めるということだと
思います。特に、傷ついている人の心やつらい思いをしている人の心は、同じような経験をしていないとわからないものです。大学の優等生よりも劣等性に意外とリーダーが多いと言われるのも
つらい思いをする経験が生きるのだと思います。人生にはつらいことが必ずありますが、それを自分の成長につなげるか、つまづきにつなげるか、大きな分岐点になります。
第三は、臨床の仕事と勉強が三度の飯より好きなこと。
好きこそものの上手なれ、という言葉がありますが、生活のためだけでできるほど甘い仕事では
ないです。
動物好きかどうかについては意見が分かれると思います。成功している院長の中には、動物はもちろん嫌いではないけれども特別に好きというわけでもないという先生がおられます。逆に、動物は大好きだけれども人間はあまり好きではないという方は臨床には向かないと思います。
第四は体力に自信があること。
人間の医療もそうですが、獣医療は特に体力の要求される仕事だと思います。
全科目診療と少なくとも2種類以上の動物を診療するということは本当に大変です。
米国で臨床を続ける女性獣医師が非常に多いのに、日本では多くの女性獣医師が臨床から離れる最大の原因はこの点にあると思います。つまり、米国では体力にハンディのある女性を支援する夜間医療、専門医療、パート勤務、プロ看護師、受付専属担当などの分業システムが実によくできていますが、日本ではそうではないです。





